空気を読むって何を読む? ラジオ写経で習得した先読み、深読み、裏読みの極意
物書きの「なんでだろう」 #2
こんにちは、どてらいです。物書きをやってます。文章を書いて米と味噌を買いながら暮らしています。
えー、突然ですが、「空気を読む」っつー言葉を耳にしたことはありますか?
僕ぁ、この言葉がどうにも好きになれなくてですね。
空気を読む。
いや、空気は吸うものやろがい!
主に窒素約78%と酸素約21%で構成され、他にアルゴンや二酸化炭素などが微量に含まれている、生物が呼吸をして生きるために欠かせない気体やろがい!
と、若かりし頃は屁理屈をこねこねしていたものです。
わかってます、わかってますよ。
「雰囲気」的な「空気」でしょ?
しゃらくせえ、いけすかん。
とはいえ、とはいえですよ。
実際に「空気を読む」ってことをやらねば、どうにもならん場面もあるわけです。
んで思った。
「空気を読む」って、何を読めってんだい?
これ、どういうわけか教えてくれる人、少ないんですよね。
「空気読めよ」っていう人ほど、やり方を教えてくれないんですよ。
ゆえに、僕の主観で解釈した「空気を読む」について、僕なりの攻略法で乗り切った話を書きます。
「空気を読めない」ままでは通用しなかった場所
こんな記事を書いていますが、僕自身、基本は空気の読めない男です。
40代にもなって、多少は改善されたと思いますが、それでも時折あやしい。
そんな僕の10代後半から20代前半なんてもう……嗚呼、思い出すだけで赤面の至り。
思った時に、思った場所で、思ったことを、思った通りに言う。
まさに脊髄トーク。「慮る」ということが何ひとつできなかったんですね。
たぶん、たくさんの人を傷つけながら生きていたと思います。
自分の言葉で、誰かを傷つけていることを、微塵も想像できないまま。
転機は25歳の時、阿佐ヶ谷でたこ焼き酒場の店長を任された時でした。
大阪出身の社長が開いた、カウンターのみの小さな店。
社長はじめ、在籍スタッフの人柄が良く、会話も楽しい。
そんな、個人店ならではの温かみで売っていた店なので、「慮る」を知らない神風野郎どてらいの評判は最悪。
常連衆は怪訝な表情を見せ、中には僕に怒りを向けてくる人もいました。
さすがの僕も、「これは大変なことが起きている」と認識します。
そんな時、最も耳にした言葉が「空気を読め」でした。
「なるほど、空気を読めていないから、こんなことになっているのか」と原因を知覚するも、「空気を読む方法」が具体的にわかりません。
手元の辞書を引いてみても、やり方が載っていない。かといって、「どうやったら、空気を読めるようになりますか」と聞いてみても「それを聞いてる時点で空気が読めていない」、「自分で考えなきゃ意味がない」と火に油を注ぐだけ。
「なるほど、自分で考えなければダメなのか」と、額面通り受け取った僕は、レコーダーを購入。
営業中の音声を録音し、プライベートはそれをBGMにして過ごし、時には文字起こしをして、自分なりに「空気を読む」のひも解きを始めます。
いやはや、今なら怒られそうな話です。
言い訳くさいですが、音声は自分で聞く以外の目的に使っていないので、ここは時効ということで……。若気の至り、怖い。
それはさておき、これをやった時点で幸運だったのは、「うわ、俺のトークおもんな!」と感じる気持ちが僕にあったことでしょうか。
課題感はちゃんと持っていたんですね。
そんな調子で研究を進めていくと、僕自身が「空気を読めない」と言われる原因が浮かび上がってきます。
僕が「空気を読めない」理由
録音を聞き、文字起こしを読んでみると、僕の接客にはいくつかの特徴がありました。
異様に返事がいい
とにかくレスポンスが早い。なんなら食い気味に返している。
タチが悪いのは、相手の話を理解していないのに、脊髄反射的に返事や返答をしていること。
客観的に、話を聞いていないことがありありと伝わる。
自分がどう見られているかに無頓着
今、自分が立っている場所がどんな場所なのか。
その中で、自分はどのような立場で、どのような役割で、どのような責任を負っているのか。
それを全く理解できていない。
逆に、周囲は正しく認識している。
自分だけ「自分がどう見られているか」がわかっていない。
暗黙のルールをわかっていない
飲食店のスタッフとしてあるまじき言葉。
相手が言われたくない言葉。
一般常識的に良しとされない言葉。
そうした「言ってはいけない」ことを平気で言う。
論点を理解できていない
相手の発言を単語、文では理解ができている。
しかし、会話の全体像が理解できていないため、中核となる論点が見えていない。
「この話がどんな話なのか」を理解していないため、結果的に発言が場にそぐわないものとなる。
発言を額面通りに受け止めている
相手の発した言葉に潜んでいる真意に気づいていない。
もっと言うと、言葉になっていない気持ちがあることを想像できていない。
なぜなら、人の気持ちに興味を持つことができていないから。
そのせいで、相手の求めていることを察することができない。
こうした言動が齟齬を生み、「空気を読めないやつ」というフィードバックが返ってきているのではないか。
もし、そうだとしたら、理論上はこれらの逆のアクションが「空気を読む」の構成要素になるはず。
安易に返事しない
自分がどう見られているかを意識する
暗黙のルールを理解する
論点を把握する
相手の求めていることを察する
書き連ねてみて、「安易に返事しない」、「自分がどう見られているかを意識する」、「暗黙のルールを理解する」あたりは「やってはいけないこと系」なので、今すぐにでも対策できる気がしました。
しかし、「論点を把握する」、「相手の求めていることを察する」については、僕にとって超高等技術です。なにせ、今まで考えたこともありませんでしたからね。
これを攻略するには、もっと具体的なアクションプランを立てる必要がある。
そのためのヒントをくれたのが、毎日聞いていた録音ファイルに入り込んでいた、ラジオ番組でした。
「空気を読む」を攻略した「ラジオ写経」
かつてJ-WAVEで放送されていた人気番組「GROOVE LINE」。
パーソナリティ・ピストン西沢の軽妙かつ下世話なトークで16:30から20:00までの3時間半を、生放送で駆け抜ける。
ご存知の方も多いのではないでしょうか?
毎日、店内でこの番組を流していましたが、「空気を読む」を研究するにあたって、すごく不思議に感じることがありました。
おしゃれで有名なJ-WAVEに似合わぬ下世話な内容
夕方から炸裂する深夜番組のような下ネタ
リスナーから寄せられた不幸話を読み上げるデリカシーのなさ
要素だけ並べると、僕のやっていることとそんなに変わらない。なのに、常連衆は笑っている。
僕のトークでは怒るのに、ピストン西沢のトークでは怒らない。
もしかして、ピストン西沢のトークの中には、僕が取り入れられる「空気を読む攻略法」があるのかもしれない。
そう考えた僕は、ピストン西沢のトークを文字起こしして、声に出して読んでみることにしました。
いうなれば「写経」です。ラジオ写経。
毎日、ラジオ写経をしていると、ピストン西沢のトークは無軌道に見えて、お決まりのパターンがあることに気づきます。
番組の構成に沿って喋っていて、全体に起承転結がある。
コーナーごとにタイムリミットがあり、その中でも起承転結がある。
一見するとアドリブに見えるリスナーからの投稿へのアンサーも、起承転結になっている
「え、当たり前じゃん」と、思うかもしれませんが、当時の僕は雷に打たれたような衝撃を受けました。
だってこれ、起承転結のパターンを作れば、どんなトークを振られても的確な返しができるってことじゃないですか。
僕は、写経をもとに、トークスクリプトを作りました。
お店が開いてからの起承転結
客が来店してから帰るまでの起承転結
新規客への起承転結
常連ごとの起承転結
自分の知ってる話が出た時の起承転結
自分がわからんネタが出た時の起承転結
客がもめそうな時の起承転結
とにかくスクリプトを作っては練習し、本番で試し、改修し、また挑む。
こうした訓練を繰り返す中で、「どてさんの話が面白いからまた来た」という、常連ができました。
そんな光景を見て、かつて僕に怒りをぶつけてきた常連衆も「だいぶ空気を読めるようになったじゃねえか」と、また店に寄り付くようになります。
この頃になると「てめえ、クルっと手のひら返しやがって」と、言うことはありません。
「●●さんのおかげですよ」と、本心で言えるようになっていました。
自分を変えるきっかけをくれたわけですからね。
感謝しかないですよ。
「空気を読む」って何を読む?
さて、長くなりましたが、「ラジオ写経」による接客改善でようやく見えた「空気を読む具体的な方法」ですが、僕は以下の3つを読むことだと思います。
話を先読みする
会話の全体像を把握して、その会話がどこへ向かっているのかを掴むこと。
言い換えれば、着地点と現在地を同時に見ること。考え方のコツは、「今、この話はどこらへんにいる?」です。
これができると、次に来る話や、相手が求めている返答がなんとなく予想できる。
話を深読みする
受け取った話の意味合いを、できるだけ正確に捉えること。
相手の発言を単語や文だけで受け取るのではなく、「つまり何の話なのか」、「何が論点なのか」を掴む。考え方のコツは、「それ、何?」です。
分からなければ、放置せずに聞き直したり、あとで調べたりする。
これによって、会話の論点を見失いにくくなる。
話を裏読みする
会話に込められた、まだ発言として表面化していない意図を汲み取ること。
ただし、裏読みはやりすぎると危険。
相手の言っていないことまで勝手に決めつけると、ただの勘ぐりになる。考え方のコツは、「なぜ?」です。
なぜ今それを言ったのか。なぜその言い方になったのか。なぜこちらに振ってきたのか。
これによって、相手の言葉になっていない希望・不安・遠慮に気づきやすくなる。
ここでいう深読み・裏読みは、相手を疑うことではありません。
表面の言葉だけでは落ちてしまう文脈や、まだ言葉になっていない希望・不安・遠慮を拾うことです。
辞書的な意味では違うから気をつけて!
たぶん、3つの要素をバランスよく発揮すると、うまく空気を読むことができるんじゃないかな、と思います。
僕は今、ポッドキャストをやっていますが、いまだに「うわ、空気読めなかった」と思う時がありますが、そういうときは、自分のトークを聞きながら文字起こしを読みます。
たいてい上記のどれかができてないんですよね。
人生、これ勉強です。
とはいえ、「空気を読む」はあまり好きではない
長くなりましたが、「空気を読む」。
やっぱりあまり好きな言葉ではありません。
前に話した「言語化」同様に、「何が原因でできていないか」が、この言葉だけでは説明できないからなんですね。
とはいえ、自分なりに分解したら、この言葉に対する恐怖はなくなりました。
すごく脳筋な解決方法ですが、自分のトークを録音・文字起こしする「ジブン写経」。結構おすすめですよ。
あ! 無許可で録音は、マネしないでね!









「空気を読む」を、先読み・深読み・裏読みまで分解しているのが見事でした。
特にラジオ写経のくだり、脳筋なのに妙に知的で好きです。会話のセンスって、実はかなり地味な反復練習でできているのですね。